【地図】一帯一路、中国が進める巨大経済圏構想

『一帯一路』とは中国とヨーロッパ間でヒト・モノ・お金の流れを生み出し、または促し、中国を中心とした巨大な経済圏を作ろうという構想です。『一帯』は陸上のシルクロード経済ベルトを、『一路』は21世紀海上シルクロードの航路を指しています。英語では The Belt and Road (略して B&R)といい、現代版クロスロードと言われます。

2014年から始まった構想ですが、2017年5月14日には、130ヶ国が参加する一帯一路のサミットが開かれました。

中国の狙いは、国内で過剰となっている労働力や工業製品を西へ西へ、現代版シルクロードの各主要な都市へ投資することによって、経済成長を促すとともにその国との政治を有利な形で行うことにあります。

ここでは一帯一路について見ていきます。

一帯一路の地図

実際にどのあたりのことを指しているのか確認します。

中国をスタートとすると、起点は内陸部にある重慶(Chongqing)。ヨーロッパ側の終点はドイツのデュイスブルグとなっています。船で物を運ぶ場合は約60日かかりますが、陸路(鉄道)を利用すると16日(約2週間)。早く、安く、大量に物を運ぶことができますね。

中国からは国内で生産過剰となっている工業製品の部品や安価な服飾類が輸出され、ヨーロッパからはワインや雑貨、高級車が輸出されています。

起点となっている重慶には現在700を超える物流企業が集中し、3年後には1日13便のヨーロッパ便を出す予定。

終点のドイツ、デュイスブルクはかつてはルール工業地帯の一部として石炭や製鉄業が盛んだった街です。時代の流れで街の景気は低迷状態でしたが、一帯一路のおかげで4万5千人の雇用が生み出され活気が戻ってきているといいます。

起点や終点、列車が実際に通過する国はもちろんですが、その周辺国においても一帯一路構想は経済発展を促進する上で非常に重要な構想になっています。そうでなければ、サミットに130もの国々が参加するはずがありません。

中国の狙い ー 経済と政治

4年前の構想から、中国は各地でインフラ整備を推し進めています。橋や港、高速道路の建設に多額の費用をつぎ込んでいます。例えば現在モンゴルに、モンゴル初となる高速道路が建設中ですがお金を出しているのは中国です。そこには2つの狙いがあると言われます。

  • 経済成長
  • 政治的な影響力

北京オリンピック以降の中国は経済成長が鈍化。一帯一路を通して経済成長や経済活性の狙いがあります。現代版シルクロードの沿線国を巻き込んだ大規模なこのプロジェクトは2016年時点の調印国で14兆円の規模となっており、これは実に北京オリンピック3回分という巨大さです。

このように巨大な経済を動かすことで他国に対し政治的な影響力を持つ狙いもあります。例えば去年、中国マネーが高速道路を建設中のモンゴルにダライ・ラマ14世が訪問しました。モンゴル国民はほとんどが仏教徒のため、ダライ・ラマは深く敬愛されこれまで何度も訪問しています。しかしチベットの独立を懸念する中国にとってはおもしろい話ではありません。中国はモンゴル政府に強く抗議し政府間対話の停止という強気な態度で対応。モンゴル政府は「ダライ・ラマがモンゴルを訪問することは今後ない」とし、一帯一路プロジェクトを続けていくことになりました。中国の直接的すぎる対応の是非はさておき、モンゴルがいかに一帯一路プロジェクト、高速道路建設を重要視しているかがわかります。

また海上航路の方ではインド洋に浮かぶ楽園、モルディブが一帯一路の波で揺れています。観光以外の主要な産業と言ったら漁業と農業くらいしかなく、慢性的な財政赤字に息喘いでたモルディブにとって中国からの資金流入は喜ばしいことであったに違いありません。モルディブの大統領は親中派で、中国から巨額のお金を借り、中国の企業が空港の拡張やビルの建設を行なっています。しかしモルディブにはお金を返せるすべがなく、借金をいいことに中国のモルディブへの影響力は増していくばかりです。

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