TED、タイおじさんのプレゼン「人生は簡単」

様々な人が自分の考えや研究内容をプレゼンするTED (テクノロジー、エンターテイメント、デザイン)。日本では英語教材として書籍になっているくらい人気がある。Youtubeにもたくさんのプレゼンが投稿されているけれど、今日は優しい顔のタイのおじさん Mr. Jon Jandai が行ったプレゼンをレポートしたい。

プレゼンの概要
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タイトルは「人生は簡単。どうして私たちは人生をそんなにも大変にするの?」というもの (原題:Life is easy. Why do we make it so hard?)。タイの貧しい村で生まれ育った Jon さんは豊かさを求めてバンコクへ。しかしバンコクで待っていたのは聞いていていたものとは全く違っていた。村に帰ったあと、Jon さんは人生が実は簡単なものだということに気づき始める。聞き終わったあと人生について考えさせられます。

(プレゼン全文日本語訳)

皆さんに言いたいことがあります。それは「人生は簡単だ」ということ。人生は簡単で楽しいものです。でも僕自身、昔はそんな風に考えていませんでした。

バンコクにいたころ、人生はとても大変で、複雑だと思っていました。

僕はタイの北東にある貧しい村で生まれました。子供の頃は何もかもが楽しくて簡単でした。でもTVがやってきて、たくさんの人が村に訪れるようになると、彼らはこう言いました。「君は貧乏だ、人生の成功を追い求める必要がある、そのためにバンコクへ行くべきだ」と。

僕は極まりが悪く感じ、貧乏に思いました。そしてバンコクへ行ったのです。

バンコクに行くと、全然楽しくなかった。たくさん勉強しなければならないし、一生懸命働かなくてはならない。そうやって初めて成功を手にすることができる。

僕は一生懸命働きました。少なくとも1日8時間働きました。しかし1回の食事で食べられるものと言えば、1杯のラーメンやチャーハンのような簡単なものしかありませんでした。

住んでいたところもとてもひどかった。小さい部屋にたくさんの人が寝ていてとても暑かった。

僕の頭の中にはたくさんのクエッションが浮かび始めました。働いているときは、どうしてこんなに大変なのだろう?と思いました。何か間違っている、僕は多くを生産しているのに、十分なものを得られない。僕には学ぶ必要がありました。そして大学へ行ったのです。

大学で学ぶことはとても大変でした、なぜならとてもつまらなかったからです。

大学の科目を見ると、多くが破壊的な知識を持っていました。僕にとって大学では生産的な知識はありませんでした。建築家やエンジニアになろうと学ぶことは、もっと破壊するようなものです。そういう人が働けば働くほど、山は崩れていきます。チャオプラヤの素晴らしい大地はコンクリートに覆われていきます。彼らは破壊していきます。

人生はとても大変で、僕はがっかりしました。

どうしてバンコクにいる必要があるのだろうかと考え始めました。子供の頃は誰も1日8時間も働いていなかった。誰もが1年のうち2ヶ月働いていました。田植えをする1ヶ月と収穫する1ヶ月です。あとは自由時間、10か月のフリータイムです。だからタイにはとてもたくさんのお祭りがあるんです。人々は自由時間をたくさんもっていますから。

日中には昼寝をします。ラオスでは今でも昼食の後に昼寝をし、起きたらおしゃべりをします。息子はどうだとか、妻は、娘はとか。彼らには時間があって、時間がたくさんあるからこそ自分自身と一緒にいることができるのです。

自分自身と一緒にいる時間があると、自分のことを理解できます。理解できると、自分が人生で何を求めているかが見えてきます。皆幸せが欲しい、愛が欲しい、皆人生を楽しみたいのです。

人生にたくさんの美しいものがあると、その美しさを様々な方法で表現しようとします。ナイフの取っ手を彫刻したり、バスケットを製織したり。とても美しいんです。でも今は誰もそんなことをしません。皆プラスチックを使います。

だから僕は、ここでは何かが間違っていると感じました。こんな風には生きていけない。僕は大学を辞める決心をして家に帰りました。

家に帰ると、子供だった頃のように生活を始めました。1年に2ヶ月働き、4トンの米を収穫しました。僕の6人家族では1年に1トンの半分も食べません。だから米を売ることができます。

それから2つの池を掘りました。1年を通して食べられる魚がいます。小さな庭も始めました。1エーカーの半分もない小ささで、1日に15分ほど手入れをします。30種類以上の野菜が採れ、6人家族では食べきれないのでマーケットで売ります。ここでも収入を得ることができるのです。

簡単だなと思いました。僕は7年もバンコクにいて一生懸命働いたのに十分な食事も得られなかった。でもここでは1年に2ヶ月と、1日に15分で6人家族を養っていける。簡単です。

以前、学校の成績が良くない僕みたいな人は家が持てないと思っていました。学校で1番になるような頭が良くていい仕事に就ける人でさえ、家を持つために30年以上も働かなくてはならない。大学も卒業できない僕に、家が持てるわけがない。低学歴の人はホープレスだ。僕のように。

でもそれから僕は自分で家を建て始めました。1日2時間、朝5時から7時まで。3ヶ月で家が建ったのです。

クラスで一番頭のよかった友達もまた3ヶ月で家を建てました。しかし彼は借金をしなければならなかった。30年かけて返済していかなくてはなりません。彼に比べれば、僕には29年と10か月の自由時間がある。人生はとっても簡単だと思いました。

そんなに簡単に家を建てられるなんて考えてもいませんでした。僕は毎年最低1つの家を建てています。僕はお金はありませんが、家はたくさんあります。問題は今夜どの家で寝ようかということです。信じられないなら、もし家が欲しいなら、やってみてください。

次に服です。

僕は貧しくてハンサムじゃない。映画スターのように着飾って、見た目を良くしようとしました。1ヶ月間貯金をしてジーンズを買いました。ジーンズを履いて右を向き、左を向き、鏡を見ました。何度見ても同じ人間です。高価なパンツは人生を変えることができない。クレイジーだ、どうしてこんなものを買ってしまったのか。1ヶ月間もかけて。僕は変わらないのに。

僕はこのことについてもっと考え始めました。僕たちはどうしてファッションを求める必要があるんだろうか。流行を追い求めても、追いつくことは決してできません。僕たちはいつも追いかけているだけです。だから、追わなくていい。ここでいい。持っているものを着ればいい。

それから今まで20年間、僕は服を買っていません。僕が持っている服はすべて誰かが着た古着です。誰かが僕を訪ねてくると、帰り際にたくさんの服を置いていきます。だから今僕には山のような服があります。

そして僕が古い服を着ているのを見て、また皆が服をくれます。問題は、僕は今誰かにしょっちゅう服をあげなければならないことです。

とっても簡単です。

服を買わなくなってから、服だけのことではないなと思いました。何かを買う時、それを買う、なぜなら好きだから。それを買う、なぜなら必要だから。

だからもし僕が好きだから何かを買う時、それは間違っている。こう考えてみるとすごく自由な気持ちになりました。




最後に、病気になったらどうするか、です。

当初、お金がないのでどうしたらいいのだろうかと、とても不安でした。しかし熟考してみると、病気になることは普通のことです、悪いことじゃない。病気は、何か悪いことをした、と気づかせてくれます。だから私たちは病気になるのです。

だから僕は病気になったとき、立ち止まって自分に帰ってくる必要があります。そして間違ってやってしまったことを考えます。

僕は学びました。自分を癒すためにどうやって水を使うのか、どうやって大地を使うのか。癒すために、基本的な知識をどう使うかを学びました。

だから今僕は自分自身を頼りにしています。人生はとても簡単で自由なものだと感じます。僕は自由です。心配事はありません。僕は僕の人生でやりたいことをなんだってできる。

以前僕にはたくさんの恐れがありました、僕には何もできなかった。でも今はとても自由で、地球上にただ一人の存在だと思えます。他の誰かになる必要はない。

こうなってくると物事が簡単で明るい。バンコクにいたころを振り返ってみると、とても暗かった。たぶんたくさんの人が僕のように感じていたと思います。

だから僕たちはチェンマイにPUN PUNという場所を作りました。主な目的は種を守ることです。種は食べ物で、食べ物は人生です。種がなければ人生もありません。種がなければ自由がない。種がなければ幸せはない。

種を守ることはとても大切で、僕たちが種を守ることにフォーカスするのもそのためです。

僕たちは人生を簡単にする方法を学べるセンターがほしい。なぜなら、僕たちは人生は複雑で常に大変なものだと教えられてきたからです。どうしたら簡単にできるでしょうか。簡単なのに、どうしたらいいのか分からなくなってしまったのです。だから一緒に学びましょう。

僕たちはいろんなものと自分を切断するように教えられてきました。自立するためです。そして頼れるものはお金だけ。お互いに支え合う必要はない。しかし今、幸せになるためには、元に戻らなくてはなりません。他人とつながり、心と体をつなげる必要があります。

僕たちは幸せになれます。人生は簡単です。初めから今の今まで、僕が学んだことは4つの基本的なニーズ、すなわち、食べ物、家、服、そして薬。これらは皆のために安価であるべきです。それこそが文明です。

でももしこれら4つのものが高価で、得るのに大変では文明ではありません。

今身の回りの物を見てみると、すべてのもが得難いと感じます。今は人間にとって最も曚昧な時代だと感じます。

大学を卒業した人はたくさんいます。地球上にはたくさんの大学があります。頭のいい人がたくさんいます。でも人生は大変になる一方です。誰のために大変にするのでしょうか、誰のために懸命に働くのでしょうか。

間違っています。普通じゃない。僕はただ普通に戻りたいだけなんです。普通の人間になりたい、動物と同等でありいたい。鳥は1日や2日で巣を作ります。ネズミは一晩で穴を掘ります。でも頭のいい人が30年もかけて家を持ちます。そして多くの人が自分に家が持てるということを信じていません。間違っています。

どうして僕たちは僕たちの精神や能力をこんなにも破壊してしまうのでしょう。もうたくさんです。僕は普通でいようと思いますが、人は僕のことを異常だ、クレイジーだと言います。でも気にしません。僕は間違っていない。間違っているのはそう考えることしかしない彼らの方です。

今僕の人生は簡単で明るい。それだけで十分です。

人は好きなように考えることができます。僕は僕の外のことを支配できません。できることは心を変えること、心を管理すること。今僕の心は明るく簡単です、それだけで十分です。

あなたが選択を望むなら、選択肢を持つことができます。選択が容易であるか難しいかはあなた次第です。

ありがとうございました。

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