池井戸潤さんの小説『陸王』のドラマがついに始まりました。中小企業が新たな挑戦をするというストーリーの大筋は2015年の『下町ロケット』と同じで、熱い社長とそれについて行く社員の様子は、働く人全ての胸にグッとくるものがあると思います。
池井戸潤さんのドラマは、「わかりやすい展開で今後どうなるかわかっているけれど見たい」というマジックがあり、見た後もちょっとした胸の高鳴り・興奮が後を引きます。
しかし、ここにきて「池井戸潤飽きた」というような評価があることも事実。作風がどれも似ているのでこのように思われるのも仕方のないことですが、今日は少し違った視点で「池井戸潤作品見疲れ」について考えたいと思います。
仕事頑張る人間になれない自分
池井戸潤さんの小説がその後ドラマになってヒットした例としては、記憶に新しい『下町ロケット』(2015年)や『花咲舞が黙ってない』(2014年・2015年)、『民王』(2015年)、『半沢直樹』(2013年)などがあり、『空飛ぶタイヤ』の映画版が2018年に控えています。
コンスタントにドラマ化されており、お茶の間を楽しませてくれています。
どの作品も、働く人が様々な葛藤・問題の中で成長していく、とてもわかりやすいストーリーです。特に平均視聴率が18.5%(関東地区・ビデリサーチ社調べ)と、最近のドラマの中では好成績を収めた人気作品『下町ロケット』では、中小企業が夢に向かって大企業に挑み、社員が一丸となって取り組む姿は本当にグッときます。
これは見る人に元気と勇気を与える反面、副作用みたいなのがあります。
日曜日下町ロケット見る => 「オレも仕事がんばろう!」となる => 月曜日出社する => ドラマ見てる時みたいに熱くなれない自分に気付く => 理想と現実のギャップに悩む => 「ちくしょー、まぁこんなもんかー」=> また日曜日が来て下町ロケット見て燃える
同じく『花咲舞が黙ってない』を見ると、
花咲舞見る => やっぱ正しいことは正しい、間違ってることは間違っているって言いたいよな!と熱せられる => 次の日出社する => そんなシチュエーションにあまりならない => 次の日出社する => やはりそういうシチュエーションにならない => ・・・ => 1週間廻ってまた花咲舞見る
もちろん最初からドラマとして割り切って見る方も多いと思いますが、見るとどうしてもいいエネルギーもらっちゃうので、張り切っちゃうんですよね。でもそんなうまいこと行かず、いいエネルギーもらう前よりも熱量が落ちてしまうことさえあります。これは大変危険な副作用です。
ジブリ作品の「耳をすませば」があまりのリア充ぶりに、見た後憂鬱になるのと少し似ています。
それでも毎週見てしまう引きの強さ
熱量落ちるくらいなら見なきゃいいじゃん、と思うし、この先ストーリーは何となく読めるなら尚更見なくてもいいじゃん、と思うのですが、なぜか見てしまう。なぜか。
一生懸命働く人は見ていて気持ちいいからです。
陸王では、60歳目前の足袋屋の2代目がランニングシューズ作りに挑戦しますが、普通のサラリーマンなら定年まで静かに過ごそうと思う時期ですよね。
この足袋屋の追加融資を何とかしようと稟議を練る銀行員もまた大変な熱量を持って仕事に当たっていました。こういう人が側にいると心強いです。
こういう、大変な熱量を持った人たちが何かを成し遂げる様にはやっぱり元気をもらえます。
ただし、見終わった後に虚しくなる、疲れる、という人は、元気がもらいたくてドラマを見て、その副作用でがっくしなる、というやばい悪循環にはまっていると思われます。自覚するだけで副作用にかからなくなりますので、思い当たる人はご注意くださいっ!