もんじゅ廃炉に要30年、廃棄物は?原子力と付き合うということ

福井県にある原子力発電所の高速増殖炉もんじゅ。22年間で稼働わずか250日。ほとんど電力を供給することなく2016年に廃炉が決定しました。

原子力と言えば、広島や長崎で多くの命を奪った原爆という事実がある一方で、資源の乏しい日本にとってはまさに夢のエネルギーだったはずです。しかし、2011年の東日本大震災によって引き起こされた福島第一原発の事故は、現代を生きる私たちに原子力の恐ろしさを改めて示しました。

さらに北朝鮮による弾道ミサイルや核実験などが頻発し、核の脅威が身近に感じられるようになってしまっています。

ここでは原子力について今一度考えるため、話題となっている高速増殖炉もんじゅについてまとめたいと思います。

原子力発電の仕組み

原子力発電は火力発電同様、水蒸気でタービンを回すことによって電力を生み出しています。違いは、水を沸騰させるのに石炭・石油を使うのか、原子力を使うのかという点です。

質量の大きい原子核の中には不安定さをもちあわせているものがあり、中性子を吸収することによって2つに分裂します。もともと1つだったものが2つに分かれるときに、エネルギーが放出されます。このエネルギーを利用しているのが原子力発電です。

分裂する際に生じた中性子によって別の原子がまた分裂する、といった具合に連鎖的に反応をおこし(臨界)、安定的にエネルギーを得られるようにしています。

高速増殖炉もんじゅとは?

高速増殖炉の「高速」や「増殖」とは?

原子力発電の仕組みは、使用される中性子のスピードによって2つに分けることができます。

  1. 速度の遅い中性子を利用する熱中性子炉
  2. 高速の中性子を利用する高速増殖炉

現在日本で商用化されているのは1番の熱中性子炉です。高速の中性子がウランの原子核に衝突するとうまく吸収されずに核分裂を起こさないため、中性子を減速させる方法です。中性子は水を通過する際に減速するという性質を持つため、減速材には水が使用され、またこの水は冷却材としても働きます。

もんじゅは2番の高速増殖炉です。高速の中性子を用いることにより、使用する核燃料よりも多くの核燃料を生成させます。

もんじゅでナトリウムが使用される理由

高速増殖炉もんじゅは高速の中性子を利用し、使用するプルトニウムよりも多くのプルトニウムを生成しながら発電します。水は中性子を減速させていまうため使用できません。そこで冷却材として用いられているのが液体ナトリウムです。ナトリウムを使う利点は他にもあり、まとめると以下のようになります。

  • 沸点が高い(約880℃)ので扱いやすい
  • 水のようにポンプで循環できる
  • 炉内で中性子を吸収し放射化したナトリウムは半減期が短い(22Na(半減期 2.6年)と24Na(半減期 15時間))

ただしナトリウムは空気中の酸素に触れるだけで自然発火するなど、取り扱いにあたっては非常に注意を要します。

燃料に直接触れている1次冷却系ナトリウム約760トンの取り出し困難に関する報道に対して、原子力研究開発機構はホームページにて次のように発表しています。

原子力機構としては、「もんじゅ」の廃止措置の際に実施する1次冷却系ナト リウムの抜き取りについては、既存の設備(設備の例:メンテナンス冷却系: 別紙参照)および技術を活用すれば技術的に可能であり、今後、具体的な方法 などについて詳細に検討し、決定していくこととしています。

また、もんじゅは運転を停止してから長期間経っているので1次冷却系ナトリウムの放射能レベルは低く人が近づけないほどではないとも発表しています。

もんじゅはなぜ廃炉?

初めて臨界に達した1994年から廃炉が決定される2016年までの22年間でもんじゅか稼働していたのは250日しかありません。

1991年(H年):試運転開始
1994年(H6年):臨界達成
1995年(H7年)8月29日:発電開始
1995年(H7年)12月8日:ナトリウム漏洩事故発生
2007年(H19年):運転再開のための工事終了
2010年(H22年)5月6日:運転再開
2010年(H22年)8月26日:炉内中継装置落下事故
2016年(H28年)12月21日:廃炉決定

ナトリウム漏洩事故が一時隠蔽されたことや、炉内中継装置落下事故、保安規定に基づく機器の点検漏れや虚偽報告があり、運用上の問題がありました。

廃炉計画

廃炉計画は4段階に分かれていますが、第2段階以降の詳細は未定で、今後検討し追加計画をしていく見通しです。廃炉作業中の維持管理費も含め、完了までに30年、3750億円の費用が見込まれています。

  • 第1段階(2018〜2022年) 炉内の使用済み燃料370本と燃料プールの160本の取り出し。また、放射能を帯びていない2次冷却系の液体ナトリウムの取り出し。
  • 第2段階(2023年〜)原子炉容器内のナトリウムの抜き取りや設備の解体準備(詳細な工程は未定)
  • 第3段階 原子炉容器内のナトリウムの抜き取りや設備の解体撤去
  • 第4段階 建物などの解体撤去

核の廃棄物

原子力発電所で問題となるのは放射を帯びた核の廃棄物。放射能を帯びているのでその辺に捨てるわけにもいきませんし、処理場を作るにしてもそれを許す自治体もありません。

現在は青森県六ヶ所村が廃棄物を保管する役割を担っており再利用処理場がありますが、あくまで「一時的」であるとしています。もんじゅから取り出された廃棄物も六ヶ所村に輸送されます。

まとめ

僕は最近広島に行く機会を得て、初めて原爆ドームを見ました。「意外と小さいな」というのが第一印象でしたが、胸にくるものは大きく、しばらくその場で考え込んでしまいました。

原子力は資源の少ない日本にとって無限とも思えるくらいのエネルギーを与えてくれます。しかし一歩間違えれば一切の動植物が住めなくなるほどの環境破壊が人間社会の尺度では測れないほどの長期間続きます。

事故が起きなくても、放射性廃棄物はやはり人間社会の尺度では測れないほどの長い間地中に埋めて置かなければなりません。

2011年の東日本大震災から電力会社の総発電量は減少傾向にあります。

経済産業省エネルギー庁「エネルギー白書2017」

震災以来稼働停止状態の原発が多いので2015年の原子力発電の割合はわずか1.1%です。このまま脱原発が進むことを願います。

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