言の葉の庭、恋の短歌ベスト6

『君の名は。』が大大大ヒットした新海誠監督のひとつ前の作品、それが『言の葉の庭』。

高校生の秋月と、秋月の高校で働く国語教師雪野先生のちょっとした淡い恋の物語。50分弱という短い作品ながら、その映像の美しさと、万葉集のある短歌を題材にした切り口、「”愛”よりも昔、”孤悲(こい)”のものがたり」というキャッチコピーにがっつりそそられます。

2人をつなぐ雨と和歌

ストーリーのキーとなるのは、雨と万葉集の和歌。

雷神(なるかみ)の 少し響(とよ)みて さし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ

雷が鳴って雨が降ってくれれば、あなたを私の側に留めておくことができるのに

雷神(なるかみ)の 少し響(とよ)みて 降らずとも 我は留らむ 妹し留めば

雨なんて降らなくても、君が望むならここに留まろう

秋月と雪野先生が出会えるのは、秋月が学校をサボると決めている雨の日の午前中だけ。しとしとと雨の降る中、公園のベンチで同じ時を過ごします。

五七五・七七というたった31文字に気持ちを凝縮させて表現する、というのは何ともロマンチックに思います。短歌にはこの他にもたくさんの恋の歌があるので、おススメの短歌をまとめます。

恋の短歌

劇中で登場する短歌の他にも恋のうたは結構たくさんあります。今も昔も、誰かに恋い焦がれる気持ちは変わらないですね。

ということで、他にどんな恋の短歌があるのか見ていきたいと思います。

逢い見ての のちの心に比ぶれば 昔はものを思わざりけり

「君と逢瀬を遂げた今に比べて、昔は何も考えていなかったなぁ」という意味。君は今何をしているだろうか、何を思っているだろか、僕はもう切なくて仕方がない・・・君との逢瀬の後はいろいろと考えてばかりだ。それに比べて昔は何も考えていなかった、という、頭の中は今君でいっぱいだよ、という歌。

君がため 春の野に出でて若菜つむ わがころも手に 雪はふりつつ

「あなたにあげるために、春の野原に出かけて若菜を摘んでいる私の着物の袖に、雪がしきりに降りかかってきます」という意味。優しい気持ちが伝わってきます。

 恋すてふ わが名はまだき立ちにけり 人知れずこそ思ひそめしか

 「誰にも知られないように、こっそり思い始めたばかりなのに、「恋している」という私の噂がもう立ってしまった」という意味。誰が誰を好き、という噂は今も昔も、ざーーーっと駆け巡るもの。

思ひわび さても命は あるものを うきにたへぬは 涙なりけり

「こんなに好きなのに、つれないあの人のことを思い嘆きながら、絶えてしまうかと思った命はまだあって、辛さに絶えきれずに涙が出てくる」という意味。絶賛片思い中の歌。

瀬をはやみ 岩にせかるる滝川の われても末に あわむとぞ思ふ

「川の流れが速く、岩にせき止められた急流が2つに分かれている。でもその2つの流れがまた1つになるように、愛しいあの人と今は分かれていても、いつかはきっと一緒になれる」という意味。川の流れに例えるところに感服。

朝寝髪 われは梳(けづ)らじ 美しき 君が手枕(たまくら)触れてしものを

「あなたと一緒に寝た後の髪は乱れているけれど櫛でとかしたくはない、だって大好きなあなたの手枕にこの髪は触れていたんですもの」という意味。女性が作っていますね。しばらくは昨夜の余韻に陶酔していたい、というような感じ。

恋に関する歌は何も日本だけではなくて世界中にあると思います。最後は個人的に僕が好きな中国の漢詩をひとつ。

我住长江头,君住长江尾。 日日思君不见君,共饮长江水。 此水及时休,此很何时已。 定不负相思意。

「君は揚子江の上流に住み、僕は下流に住んでいる。毎日君を思っているのに君には会えない、同じ河の水を飲んでいるのに。この川の流れは留まることはなく、離れているこの恨みは止めることができない。僕はただ願う、君の心が僕と同じでありますように、お互いの思いが決して裏切られることのないように。」という意味(訳がうまくいかない・・・)。

余談ですが『言の葉の庭』の雪野先生は『君の名は。』では糸守村の学校で教師をしているという話です。黄昏について解説していたあの先生が雪野先生。秋月との出会いで雪野先生もしっかりと歩き始めたんだなぁと思うと感慨深い。

「令和」という新しい元号が和歌からきているらしく、万葉集が注目を集めています。ここに紹介した以外にもたくさんの歌がありますので、1冊読んでみるといいかもしれません。


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