映画『シン・ゴジラ』の見どころのひとつは自衛隊かっこよさ。これまでの怪獣映画とは一線を画すリアルな描写は普段知らない自衛隊の姿や戦闘力を教えてくれます。
しかし自衛隊といえば自然災害などで救助活動をしているイメージが強く、また独特の言い回しもあって、「シン・ゴジラの自衛隊はかっこよかったけど何だかよくわからない」と思った方もいると思います。
そこで、今回から計4回にわたって、劇中の自衛隊について現役陸上自衛官のKさんにお話を伺いました。まずはゴジラが初上陸したシーンについての解説です!
※この記事は「シン・ゴジラ」のネタバレを含みます、ご注意ください※
ゴジラ上陸、その時自衛隊は
まず最初にリアルだと感じたのは、ゴジラが上陸したときの、自衛隊による災害派遣の避難誘導です。普通のパニック映画では、いきなり戦車が出てきて攻撃をするようなイメージが先行されがちですが、やはりまずは避難誘導。自衛隊(役所)は前例主義なので、都も自衛隊も攻撃前提の出動はまず考えないでしょう。
ちなみに陸上自衛隊では有事の際には30〜40分で先遣部隊が出動できる体制を常に取っています。基本的には県知事などの要請により出動しますが、阪神淡路大震災の際、県知事からの要請がしばらくなく出動が遅れた自衛隊に対して批判が集まりました。その反省から、現在では何かあったら要請の有無に関わらずすぐに先遣部隊を派遣します。
練馬の第1師団はすでに災派で出ており引き続き避難と救護を優先させます。どちらにしろ普通科の装備では対処できないでしょう。
特科も機甲科も即応出来ない、やはり対戦ヘリだ、木更津の状況を確認しておけ。
ゴジラ映画にはこれまで何度も自衛隊が出てきましたが、このようなセリフは初めてです。そのまま仕事で使っても何らおかしくないセリフですね。
普通科、特科、機甲科
一般の方にはわかりづらい普通科、特科、機甲科。ごくごく簡単にいうと、普通科はライフルを持って前線に駆けつけるいわゆる歩兵の集まり。特科と機甲科は戦車などの大型武器を持ち合わせた集まりを言います。
普通科の装備は基本的に対人用の小銃(いわゆるライフル)、大型武器でも迫撃砲くらいしか扱っていないのですが、迫撃砲は命中率が低く、しかも移動を続けているゴジラに、市街地に被害を出さずに命中させるのは困難です。「普通科の装備では対処できないでしょう」というセリフはこのためですね。
「特科も機甲科も即応出来ない」と言われているのは、機甲科や特科が割と田舎に配置されているからです。戦車を持つ舞台ですが、東京へ行くには時間がかかります、即応はできないですね。
練馬の部隊が災害派遣で速攻で展開している様子や、機甲科特科が即応出来ないことをきちんと描いている点は他の怪獣映画と大きく違って、とてもリアルでしたね。
さすが現役自衛官、一般人では聞き慣れない言葉が多くて、流してしまいそうなセリフですがすらすら頭に入ってくるようです。こういうことを知っているとちょっぴり楽しく『シン・ゴジラ』を見れそうですね。
では次回もお楽しみ!
陸上自衛官Kさん ― 子供の頃からゴジラ、ウルトラマン、ガメラなどの特撮好き、それが高じて自衛官になる。一番好きなゴジラ作品は初代またはメカゴジラ(選べない)。また自衛隊がかっこいいという理由でビオランテも好き。