自衛隊の階級、給与と手当てについて

災害派遣や北朝鮮のミサイル問題などで度々注目をあびる自衛隊。公務員という立場もあり、数年前からの婚活ブームでは女性にもてる職業のひとつです。さらに2016年の大ヒット映画『シン・ゴジラ』では、国防最後の要として自衛隊(主には陸上自衛隊)がリアルに描かれたことによって、女性のみならず男性にも自衛隊に興味をもった人が続出しました。

しかしながら、その特殊な仕事内容や階級は民間企業に馴染みがある多くの人にとっては全く未知の世界でとても分かりにくいものです。例えば役職が部長と聞いたら会社の規模はさておきそれなりに地位のある偉い人だということはわかりますし、警部補と聞けばその上が警部だと多くの人がわかると思います。その一方で、階級が2等陸曹と聞いてそれがどの程度の位にあるのかわかる人は少ないのではないでしょうか。特にミリタリーに興味がない人は尚更です。

ここでは、自衛隊に関して多くの方が興味をそそられるであろう階級と給与について書いていこうと思います。

数字の参照元は、防衛省の職員の給与等に関する法律、防衛省の職員の給与等に関する法律施行令です。

自衛隊の階級

階級の種類

陸上・海上・航空と3つ種類がありますが、階級の分け方は同じです。階級を示す階級章はこんな感じ。星のように見えるのは桜の花。陸上と航空の階級章はほとんど同じで、海上はすこしだけ複雑になっています。

出典:平成28年版防衛白書

階級を決める入隊区分

自衛隊はどのような経路で入隊したかで最初の階級が異なり、その後どこまで昇級できるかがほぼ決まります。それを大きく分けると次の4つです。

・防衛大学校卒業
・一般幹部候補生
・一般曹候補生
・自衛官候補生

防衛大学校卒業者または一般幹部候補生は一定期間の教育を受けた後、3尉からスタートします(大学院卒は2尉スタート)。その後必要な教育を段階的に受け、ストレートにいけば28歳前後で1尉になるようです。

一般曹候補生は入隊後2年9ヶ月以降選考により3曹からスタート。

自衛官候補生は一番下の士クラスから徐々に登っていく叩き上げのコースで、定年を迎える頃に1曹や曹長になっている場合が多いようです。曹クラスになると、上の階級には自分よりも年下で現場を知らない上司が、下には若く現場経験の少ない部下がいるので、中間管理職的な立場となります。

昇級が早いのはやはり防衛大学校卒業者と一般幹部候補生となります。曹クラスであれば、内部の幹部試験に合格することによって幹部になることも可能です

自衛官の給与

自衛隊は公務員(正確には特別職国家公務員)なので安定ではありますが、高給取りかと言えばそんなことはありません。ごくごく一般的な給与水準です。諸手当がついた場合は結構な額がもらえるようになりますが、手当については後述します。

さきほどの階級の上から順に見て行きましょう。

*1 統合幕僚長、陸上幕僚長、海上幕僚長、航空幕僚長にある自衛官の定年は62歳
*2 1任期目は、陸上自衛官は一部技術系を除き1年9ヶ月、海上・航空自衛官は2年9ヶ月。2任期目以降は各2年

下から3つの士クラスは言ってみれば契約社員。曹クラスになって初めて定年まで働ける安定を手に入れることができます。階級の中でも幅があるのは「階級は変わらないけど勤続年数が長い」場合があるからです。特に給料が高いわけではないですが定年が早いので生涯年収はサラリーマンと比べて低くなる可能性もあります。

3曹になり安定すれば、結婚を十分に考えられるでしょう。

自衛官の手当

自衛官の仕事は多岐にわたりますが、次の5つに該当する職務の手当は比較的高く、給与が高額になる可能性があります。

航空機乗員 航空手当
艦船乗組員 乗組手当
落下傘隊員 落下傘隊員手当
特別警備隊員 特別警備隊員手当
特殊作戦隊員 特殊作戦隊員手当

航空手当

以下の式から計算できます。

その自衛官が属する階級の最低の号棒の額(上の表の最低棒給月額のこと)** × A × B

A :
ジェット機の場合は0.8, その他は 0.6

B :
– 随時航空機に乗り操縦、針路測定、通信操作、機体の取り扱いをしている自衛官は 1
– 随時航空機に乗り、上に挙げる職務に関する技能習得を本務とする自衛官は 0.8
– 操縦技術の維持向上のため防衛大臣の定める基準に従い飛行を命ぜられている自衛官は 0.65

例えば、3等空曹がジェット機に乗って操縦技能を習得しようとしている場合(そのような場合が実際にあるかどうかはわかりませんが)、

約19万円 X 0.7 X 0.8 = 10.6万円 となります。特殊性も高く、結構高額な手当ですね。

** 階級が3佐以上である場合は、その額に94.2/100の範囲内において防衛大臣が定める割合を乗じて得た額となります。

乗組手当

艦船乗組員として防衛大臣の定めるものに乗り組んでいる海上自衛官には乗組手当が支給されます。

計算方法は次の通りです。

その自衛官の受けている棒給月額 × 0.33 ***
*** 潜水艦の場合は 0.455
*** 防衛大臣が定める艦船の場合は 0.275

その他の乗組員の場合は
その自衛官が属する階級の最低の号棒の額 x 0.264 または 0.165

乗組手当ては何に乗組むのかによって手当ての幅が大きくなっていますが、一般的な艦船の場合は給与が約30%増しになるというイメージでしょう。

航海手当

乗組手当とは別に航海手当もあります。定められた水域を定められた時間・日数以上航海した場合に支払われる手当です。艦船に配乗された海上自衛官は乗組手当と航海手当により、同年代の平均月収よりはるかに高い給与を得ることも可能です。閉鎖的な船上かつ電波の届かない海上で数か月耐えることへの対価です。

この辺りの手当てのことはこちらに書きました。

海上自衛官、護衛艦の乗組員の給料はいくら?
四方を海に囲まれた日本では、海から日本を守ることはとても重要です。中国の漁船が尖閣諸島周辺海域に集結したニュースを覚えている人もいると思...

落下傘隊員手当

落下傘隊員は輸送ヘリからパラシュートを背負って飛び降り前線に飛び込んでいく自衛官で、千葉の習志野駐屯地の第1空挺団に唯一配備されています。

手当ての計算は以下です。

落下傘隊員の属している階級における最低の号俸の額** x A または B

A: 落下傘を利用して航空機から降下する作業(落下傘降下作業)に関する訓練課程を修了し,かつ,落下傘降下作業を行うことを本務とする陸上自衛官の場合は 0.33

B: 落下傘降下作業に関する技能を修得することを本務とする陸上自衛官又は航空自衛官の場合は0.24

** 階級が3佐以上である場合は、その額に94.2/100の範囲内において防衛大臣が定める割合を乗じて得た額となります。

落下傘降下作業手当

落下傘隊員手当とは別に、1回の作業に付き支払わる手当もあります。作業1回につき6,650円(落下傘隊員手当又は特殊作戦隊員手当の支給を受けない者にあつては、12,600円)を超えない範囲内で、防衛大臣の定める額(特に困難な作業で心身に著しい負担を与えると防衛大臣が認めるものにあつては、当該額にその25/100に相当する額を超えない範囲内で防衛大臣の定める額を加算した額)

特別警備隊員手当

計算方法は次の通りです。

特別警備隊員の属している階級における最低の号俸の額 x A または B

A: 海上における警備行動を命ぜられた海上自衛隊の3等海曹以上の自衛官の職務の執行について準用される海上保安庁法第17条第1項の規定による立入検査を行う業務(対象船舶が容易に停止しないこと又は対象船舶にいる者が武装していると予想されることにより,当該業務の遂行に特に困難又は危険が伴うものに限る.以下「特別警備業務」)に関する訓練課程を修了し,かつ,特別警備業務を行うことを本務とする海上自衛官の場合 0.495

B: 特別警備業務に関する技能を修得することを本務とする海上自衛官の場合 0.396

▼海上保安庁法第17条第1項
海上保安官は,その職務を行うため必要があるときは,船長又は船長に代わつて船舶を指揮する者に対し,法令により船舶に備え置くべき書類の提出を命じ,船舶の同一性,船籍港,船長の氏名,直前の出発港又は出発地,目的港又は目的地,積荷の性質又は積荷の有無その他船舶,積荷及び航海に関し重要と認める事項を確かめるため船舶の進行を停止させて立入検査をし,又は乗組員及び旅客並びに船舶の所有者若しくは賃借人又は用船者その他海上の安全及び治安の確保を図るため重要と認める事項について知つていると認められる者に対しその職務を行うために必要な質問をすることができる.

特殊作戦隊員手当

計算方法は以下の通りです。

特殊作戦隊員の属している階級における最低の号俸の額**  x A または B

A: 特殊作戦を行う業務(特殊作戦業務)に従事することを本務とする陸上自衛官の場合は 0.495。※その従事する特殊作戦業務に特定の技能が必要とされないものとして防衛大臣が定める特殊作戦隊員にあつては,その従事する特殊作戦業務の危険性及び困難性に応じて防衛大臣の定めるところにより33/100または12.375/100

B: 特殊作戦業務に関する技能を修得することを本務とする陸上自衛官の場合は 0.33

** 階級が3佐以上である場合は、その額に94.2/100の範囲内において防衛大臣が定める割合を乗じて得た額となります。

まとめ

自衛官の給与は、防衛省の職員の給与等に関する法律、防衛省の職員の給与等に関する法律施行令に定められています。かなりのボリュームですのでその全てをカバーできませんが、皆さんが比較的興味のありそうな手当についてまとめました。

ここに紹介した手当て以外にも、一般的な民間企業に見られる通勤手当、住宅手当、単身赴任手当、地域手当、広域異動手当などもあります。

また自衛隊だけにあるような災害派遣等手当、対空警戒対処等手当といったものもあります。

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