秒速5センチメートル【映画】ネタバレありの感想、手紙の内容 

kiminonaha新海誠監督の最新作『君の名は。』が日本のみならず世界で旋風を巻き起こしています。主題歌となっているRADWIMPSの「前前前世」もMV再生回数が6千万回を超え(2017年1月には1億回を超えました)、iTunesのダウンロードランキングでも上位をキープしています。

さて、こんなに大ヒットしてる『君の名は。』。もともと市街地や自然など、風景の描写に定評があった新海誠監督、今回も期待を裏切らずとても美しかった。

しかし、僕は全力で『秒速5センチメートル』のほうをおすすめしたいっ。

秒速5センチメートル 

2007年3月3日公開、転勤族である遠野貴樹と篠原明里の恋の物語。

1. 桜花抄(おうかしょう)
2. コスモナウト
3. 秒速5センチメートル

3つの短編からなり、小中学生時代、高校時代そして大人時代をそれぞれ描くことで、幼いころの恋がどうなるのかを描いています。

ネタバレを含む感想

1. 桜花抄(おうかしょう)

あらすじ

ともに転勤族の貴樹と明里。貴樹が通っていた東京の小学校に、1年違いで明里が転校してくる。お互い転入生だったことや、2人とも運動場よりも図書館が好きだったことから、ごく自然といつも一緒にいるようになる。そのことで同級生にはやし立てられることもあったけど、一緒にいられれば平気だった。お互い特別な想いを秘めていた。

明里は小学校卒業と同時に栃木の中学へ転校。離れ離れになる。そして中1の夏、貴樹の元に明里からの手紙が届く。携帯電話のない時代、2人の文通が始まる。

そして中1の終わりごろ、今度は貴樹の、種子島への転校が決まる。

「もう会えなくなるかもしれない」と貴樹は明里のいる栃木まで、会いに行くことを決意。

約束の3月3日、季節外れの大雪に見舞われ、電車は遅延、約束の7時から大幅に遅れること深夜、ようやく明里の待つ駅にたどり着く。

2人は雪の降る中を歩き、桜の木の下でキスをする。

翌朝一番の電車で貴樹は東京に帰った。2人も渡すはずだった手紙を渡せずに。

桜花抄では、2人が手紙に何を書いたのか、そして、明里はどうして貴樹に手紙を渡せなかったのか、が一番のポイントです。

映画には描かれていませんが、小説には2人の手紙の内容が全文載っています。

貴樹くんへ

お元気ですか?
今日がこんな大雪になるなんて、約束した時には思ってもみませんでしたね。
電車が遅れているようです。だから私は、貴樹くんを待ってる間にこれを書くことにします。
目の前にストーブがあるので、ここは暖かいです。そして私のカバンの中にはいつも便箋が入っているんです。いつでも手紙が書けるように。この手紙をあとで貴樹くんに渡そうと思っています。だからあんまり早く着いちゃったら困るな。どうか急がないで、ゆっくり来てくださいね。

今日会うのはとても久しぶりですよね。なんと十一ヶ月ぶりです。だから私は実は、すこし緊張してます。会ってもお互いに気づかなかったらどうしょう、なんて思っています。でもここは東京にくらべればとても小さな駅だから、分からないなんてことはありえないんだけど。でも、学生服を着た貴樹くんもサッカー部に入った貴樹くんも、どんなにがんばって想像してもそれは知らない人みたいに思えます。

ええと、何を書けばいいいんだろう。うん、そうだ、まずお礼から。
今までちゃんと伝えられなかった気持ちを書きます。

私が小学四年生で東京に転校していったときに、貴樹くんがいてくれて本当に良かったと思っています。友達になれて嬉しかったです。貴樹くんがいなければ、私にとって学校はもっとずっとつらい場所になっていたいと思います。だから私は、貴樹くんと離れて転校なんて、本当にぜんぜんしたくなかったのです。貴樹くんと同じ中学校に行って、一緒に大人になりたかったのです。それは私がずっと願っていたことでした。

今はここの中学にもなんとか慣れましたが、(だからあまり心配しないでください)それでも「貴樹くんがいてくれたらどんなに良かっただろう」と思うことが、一日に何度もあるんです。

そしてもうすぐ、貴樹くんはもっとずっと遠くに引っ越してしまうことも、私はとても悲しいです。今までは東京と栃木に離れてはいても、「でも私にはいざとなれば貴樹くんがいるんだから」ってずっと思っていました。電車に乗っていけばすぐに会えるんだから、と。
でも今度の九州のむこうだなんて、ちょっと遠すぎます。

私はこれからは、一人でもちゃんとやっていけるようにしなくてはいけません。そんなことが本当に出来るのか、私にはちょっと自信がないんですけど。でも、そうしなければならないんです。私も貴樹くんも。そうですよね?

それから、これだけは言っておかなければなりません。
私が今日言葉で伝えたいと思っていうることですが、でも言えなかったときのために、手紙に書いてしまいます。

私は貴樹くんのことが好きです。

いつ好きになったのかもう覚えていません。とても自然に、いつの間にか、好きになっていました。初めて会ったときから、貴樹くんは強くて優しい男の子でした。私のことを、貴樹くんはいつも守ってくれました。

貴樹くん、あなたはきっと大丈夫。どんなことがあっても、貴樹くんは絶対に立派で優しい大人になると思います。貴樹くんがこの先どんなに遠くに行ってしまっても、私はずっと絶対に好きです。どうか どうか、それを覚えていてください。

明里が圧倒的に貴樹に頼っていたことが伺えます。

次に風で飛ばされてしまった貴樹の手紙。

大人になるということが具体的にはどういうことなのか、僕にはまだよくわかりません。でも、いつかずっと先にどこかで偶然に明里に会ったとしても、恥ずかしくないような人間になっていたいと僕は思います。

そのことを僕は明里に約束したいです。

明里のことが、ずっと好きでした。

どうか どうか元気で。
さようなら。

手紙を渡すことができていたら、貴樹はそんなにも明里のことを引きずらなったのでは、と思います。

桜の木の下で交わしたキスがあまりにも完璧で、一瞬の永遠で。手紙では過去形であった「好き」が、現在進行形の好き、もしくはそれ以上の愛おしさになって、「あのキスの前と後では、世界は何もかもが変わってしまったような気がした」から、明里へのさよならを言うことができず、そして貴樹は帰りの電車の中で「彼女を守れるだけの力が欲しい」と強く願う。

一方の明里も手紙を渡せませんでした。

東京にいたころ、圧倒的に貴樹に依存していたことを明里自身もわかっていて、これからは1人でちゃんとしなくちゃとわかっている。ずっと好きだけど、もう貴樹くんと会うことはできないだろう。でも手紙を渡してしまったら、それを認めることになってしまう、こんな感情だったのではないかと思います。

2. コスモナウト

あらすじ

種子島に転校した貴樹。

「手紙書くよ、電話も」と言って別れたのに、明里のからの手紙は来なくなった。

澄田は中学2年の時に転校してきた貴樹にほとんど一目ぼれ。追いかけるように同じ高校に進学。高校3年生になり、進路にも恋にも迷い、サーフィンもスランプに陥っていた。

そんな折、貴樹も迷ってばかりでいること、出来ることを何とかやっているだけであることを知り、「貴樹くんも同じなんだ」とちょっと吹っ切れる。

そしてスランプだったサーフィンで、しばらくぶりに波の上に立てた日、貴樹へ告白を決意。

しかし貴樹が自分のことを全く見てなどいないことを悟り涙する。

郵便受けを開けては何も入っていないことを知り肩を落とす貴樹の描写があることから、手紙を書かなくなったのは明里からだと推測できます。

渡せなかった手紙の通り、明里は貴樹がいなくても1人でちゃんとやっていくと決意したので、手紙は書かなくなってしまったのだろうと思います。

一方の貴樹は明里が忘れられず、送信先のわからないまま明里にメールを書いては消しての繰り返し。切なすぎます。

3. 秒速5センチメートル

東京で社会人となった貴樹が、葛藤と迷いの日々から抜け出せずにいることがセリフからわかります。

「この数年間、とにかく前に進みたくて届かないものに手を触れたくて、それが具体的に何を指すのかも、ほとんど脅迫的ともいえるようなその思いがどこから湧いてくるのかもわからずに僕はただ働き続け、気が付けば、日々弾力を失っていく心が、ひたすら辛かった」

「そしてある朝、かつてあれほどまでに真剣で切実だった思いがきれいに失われていることに気づきもう限界だと知った時、僕は会社を辞めた」

明里を求め続けた貴樹は、大人になってようやく、もう明里には会えない現実を受け入れます。一方の明里は結婚することになり、荷物整理をしていて見つけたあの日の手紙を読んで、昔を懐かしく思います。

周りに馴染めず、あれほど貴樹に依存していた明里は人生を取り戻し、逆に、周りとうまくやっていた貴樹は歳を追うごとに殻に閉じこもり、受け入れるまでにものすごい時間を費やしてしまった。

貴樹くんがその後幸せになってくれていることを僕は願うばかりです。

山崎まさよし×新海誠

おそらく『秒速5センチメートル』の方が誰にでも起こりえる点で評価されるのではと思います。80年代生まれなら山崎まさよしの「one more time, one more chance」がどれ程切なく、どれ程センチメンタルでいい曲か知っているはず。

明里と貴樹の静かで切ない恋物語と、写真のように緻密で繊細な風景。そしてラストに流れる山崎まさよしの「one more time, one more chance」。この歌のために作ったような映画で、この映画のために作ったような歌で、何もかもが完璧です。

貴樹が明里と再び会うことはないと悟ったとき、コンビニから流れてくる山崎まさよし。あーっ、もう、なんて悲しい曲なんだ、なんていい曲なんだ。なんていい映画なんだ。

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